【特別養子縁組とは?】民間団体や児童相談所からの委託の違いや条件を解説!

特別養子縁組 ブログ 
  • 「“養子”や“養子縁組”など聞いたことがあるけど、日本ではどうなっているの?」
  • 「特別養子縁組は、ハードルが高そうだけど年齢や年収など条件は?」
  • 「子供を迎えるのにかかる費用が「無料」もしくは「数百万」かかるの!?」
  • 「不妊治療をあきらめて、特別養子縁組を検討しはじめたけど、何から始めればいいかわからない」

とその実態や制度などがなかなか掴めない“養子縁組”を、特別養子縁組で実際に子供を迎えた筆者が当事者として分かりやすく解説いたします!

1.特別養子縁組とは?普通養子縁組との違いは?

 よく海外のセレブレティが自身とは全く違う人種の子供を養子に迎えて、仲が良さそうに過ごしている様子などを、メディアにキャッチされているのを目にします。

 挙げればきりがありませんが、ブラット・ピットはアンジェリーナ・ジョリーとまだ婚姻関係にあった時6人の子供を育てていてそのうちの3人が養子。ほかにも数々のセレブレティが養子を迎えそのことを公にしています。またアップルの創業者スティーブ・ジョブスは自身が養子であったことを公表していて、海外では家族の在り方の一つとして、比較的オープンに語られています。

 各国さまざまな養子縁組にかかわる定義の違いがありますが、日本においては大きく普通養子縁組と特別養子縁組にわけられます。

 普通養子縁組はその目的が、養親の老後の扶養や遺産相続の後継者確保など、“家”の存続のためであり、戸籍上養親と実親のどちらとも親子の関係を結ぶことが出来るのに対し、特別養子縁組は基本的に児童福祉のための制度であり、養親との関係性を重視。

 実親との縁は完全に切れ、事実上完全な実子となり戸籍上での続柄は、「長男」「長女」などと記されるのです。(養子縁組したことを意味する“民法812条の2による裁判確定日”と戸籍謄本に記載記載

 他、養子縁組制度とは別に里親制度というのもありますが、法律上の親子関係は築かれず親権は生みの親がもち、18歳で生みの親に戻るか自立しなければなりません。

 何らかの事情により家庭での養育が困難になった子供に温かい家庭環境の下で養育を提供される制度。こちらは独身の方もきちんと研修などを経て里親認定されれば、なることが出来ます。児童福祉法のもとに自治体などから委託された児童を、施設などで集団生活するよりも、養育を家庭内ですることで、基本的な生活習慣と豊かな人間性や社会性を養い、子供たちの自立を支援するのを目的としています。

 普通養子縁組や里親は独身であってもできるのに対し、特別養子縁組は養子を迎え入れる養親は夫婦である必要があります。

このあと、特別養子縁組の条件や成立までのプロセスなどを徹底解説していきます!

2.民間あっせん団体と児童相談所の違いについて

 養子縁組をするためには、民間あっせん団体を介して迎えるのと児童相談所を介して養子を迎えるという2つの方法があります。

 民間団体では子供を迎えるための費用が数十万から数百万かかり、その平均は93万円。

その代わり児童相談所を介して養子縁組をすると、かかる費用はほぼ無料。

 養子縁組をするにも、児童相談所経由と民間団体経由ではそのプロセスに大きな違いがあるのです。

養子縁組を成立までの流れを徹底解説

民間あっせん団体の場合 (団体によっては流れ異なる)

 ※民間団体によっては、児童相談所の里親登録を条件としているところも。

・民間団体の開催する説明会に参加 (複数の団体の説明会に参加し条件の違いなど確認)

・担当者との面談

 (養親の条件を満たしているか、養子を迎える環境が整っているかなどを判断する)

・養親登録 (待機期間にはいる。登録後数か月~数年かかる場合も)

・あっせん団体から養子を引き取れるかの連絡がはいる

・乳児迎え入れ(新生児から0歳であることがほとんど)生活がスタート

 (団体によっては既に生まれている子供だったり、産まれる前に連絡が入ることも)

・家庭裁判所への申立て

(試験養育期間となり家庭裁判所の担当者による調査や家庭訪問など)

・6か月間の試験養育期間を経て、特別養子縁組の審判確定

・審判確定後、戸籍への入籍申請

児童相談所(東京の場合)

 児童相談所を経由して養子縁組をする場合、養子縁組里親への登録が必要。(自治体によって流れは異なる)

・児童相談所にて養子縁組里親への登録申請

・里親・養育里親のための研修を受ける

・児童相談所職員による家庭訪問や調査

・児童福祉審議会里親認定部会で審議(2ヶ月に一回)

・東京都知事が認定登録

登録後、児童相談所から子供の紹介を待ちます。

紹介を受けてからは、特別養子縁組の成立にいたるまでは、マッチングの期間となり数か月間にわたり複数回会ったり、養親希望者と外に出掛けたり、家に泊まったりと少しずつ慣らして相性をみます。

・児童相談所から子供を紹介される

・児童相談所職員立ち合いのもと、子供と面会

・1~3か月間の交流 (複数にわたり交流し外に出掛けたりする)

・委託の決定  

・委託から6か月間同居して様子を見たのちに家庭裁判所へ申立て

・家庭裁判所の調査を受け、特別養子縁組の審判確定

・その後養親の戸籍への入籍申請

民間あっせん団体はその団体によって料金に差がありますが(自治体によっては助成金1人あたり上限40万円でるところも)、かかる費用の主となるものは、生みの親の出産費用(出産一時金などで戻るものも)、宿泊滞在費や交通費、社会福祉士など専門職を雇用する上での費用とその団体を存続させるための維持費や関わるスタッフの手数料など。
対して児童相談所を経由すると、かかる費用はほとんどが税金によって賄われているため、養親はほぼ無料となります。

しかし児童相談所経由では里親登録するのに、研修や実習などを受けるのに一定の期間を要します(自治体によって異なる)。その後里親認定を受け子供を紹介されて、養親との相性などを見極め、数か月間時間をかけながらマッチングしていくので、養子となる子供はすでに産まれてから数か月もしくは1歳以上となる場合も。
性別や障害の有無、施設に預けられることになった経緯なども比較的細かく説明を受けられ、養親の希望もある程度は考慮されます。

対して民間からの委託では、性別や国籍、障害の有無などはほぼ希望は聞かれず、どのような子供であっても受けいれる覚悟が必要です。

 望まない妊娠をした実母は産まれてすぐか、もしくは妊娠中に相談にくる場合がほとんどのため、委託される子供は新生児であることが多いです。

 

 児童相談所にするか、民間団体にするか迷う場合は、どちらの話も聞きに行くのをお勧めいたします。自治体によって、児童相談所を経由して初めから特別養子縁組として委託しているケースがほとんどないという自治体も少なくありません。また民間の場合も団体によって年齢制限を設けていたり、子供の名前は実親がつける、養父母のどちらかが育児に専念するよう求めるなど考え方に違いがありますので複数の説明会に参加することを強くお勧めいたします。(両方、もしくは複数に登録する夫婦も)

 特別養子縁組は子供のための制度であるということを理解し、養子との出会いも一つの大切な“縁”だとおもいます。養子縁組を希望する全ての養親さんたちに良い縁が繋がれますようこころから願っています。

3.特別養子縁組が成立する条件とは?

 特別養子縁組の成立には、下記のような要件をみたしたうえで、実親による子供の養育監護が著しく困難、または不適当な事情がある場合において、子供の利益のため特に必要があると家庭裁判所に認められることが必要です。

 養親は夫婦でなければならず、養親となる方の年齢は25歳以上。(片一方が25歳以上であればもう一方は20歳以上であれば養親となることが出来る)

 養子の年齢としては、養親となる方が家庭裁判所に審判を請求するときに15歳未満である必要があります。(子供が15歳になる前から養親となる方に監護されていた場合には18歳に達する前まで審判を請求することが出来る)

 ほか、同居の親族も含め犯罪歴がないこと、日本国籍であること、同居する実子がいないこと(民間団体によっては実子の有無は無関係)などがあります。

・家庭裁判所に申立て

 養子となる子供を家庭に迎えてから法律上でも親子関係を結ぶために、養親の居住地を管轄する家庭裁判所で「特別養子縁組成立」の申立てを行います。

申立てには申立書のほか養親となる人や養子、実父母の戸籍謄本などの書類が必要。

 養親に対する家庭裁判所の調査では、広範囲に及ぶ様々な質問がなされ、特別養子縁組を希望した理由や職業、自らが育ってきた家庭環境、世帯年収から貯金などの総資産額、住宅ローン残高やほか借金の有無。健康状態からそれぞれの親族との関係、幼少期からの生い立ち。また特別養子縁組をするにあたり、家族などに知らせているか‥など。 

 そもそも特別養子縁組は子供のための福祉であるため養親家族のもとでトラブルに見舞われないよう事前に入念な調査がなされます。

・実親の同意

 家庭裁判所は実親との接見で子供を養親に託すことへの同意を得るためその意思を改めて確認します。ただし実父母による虐待や遺棄、その他子供の利益を著しく害する事由がある場合、また長期間連絡が取れないなど実父母の同意が不要となる可能性もあります。

 また実親の中には育てられないということが明確であったとしても、同意に関してギリギリまで悩み時間が掛かることもあり、まれに翻意となる場合も。

・6か月間の試験養育期間

 申立てを行うと縁組が成立するまでの監護期間試験養育期間)に最低6ヶ月間かかり、この間に養親と養子が一緒に生活をして、家庭裁判所が正式に養子をこの養親に任せても大丈夫なのかというのを見極め、家庭訪問をしたり面談を通して家庭裁判所が特別養子縁組の成立を決定をします。

 家庭裁判所での面談では既述の通りさまざまな事柄を聞かれるが、その際の参考となるものとして持参をしたほうが良いもの、もしくは指定されるもの。

母子手帳→受けるべき予防接種や検診をうけているか、月齢ごとに成長記録を記載しているか。

育児日記→日々の生活記録 ミルクや離乳食、排泄などがきちんとなされているか、

日々の成長が記録されているか。

写真アルバム→お宮参りやお食い初め、日々の生活の中で記録されているものなど。

 上記は全て、養子に迎えた子供の成長をしっかり見守り、普通の親が自分の子供にしていることが同様になされているかなどの子供を養育する上での説得力の得られる材料となるものなのでしょう。

審判確定と入籍申請

 最終的に裁判官によって特別養子縁組の審判が確定します。

 審判確定後10日以内に、養親が特別養子縁組の戸籍届申請の手続きを行う。

 その後晴れて入籍となり、戸籍謄本には「長男」「長女」などが記される。

但し、特別養親組で迎えたことを意味する「民法817条の2」とも記載される。

真実告知

 「全てのこどもは自らの出自を知る権利がある」

 自分はどのようにして生まれたのか、自分の遺伝的ルーツはどこにあるのかを知る権利があるのは当然のこと。

 一昔前はこの「真実告知」が成されないまま養子が大人なり、戸籍謄本などを請求して知ったり、最悪の場合思春期などで親子喧嘩などの中で知らされるなどして、その後養子と養親の関係性が悪化してしまったなどというケースがありました。

 近年では、子供が幼児のうちから段階的に真実告知をする必要があるとされていて、全てを事実として伝え、養子が成長した後に実親のことを調べたり、会いたがったりすることも養親が協力するなどして、養子の気持ちを尊重するという流れが主流となっています。

 筆者も養子が3歳になったころから、段階的に真実告知をしていて、

「実母さんは、事情により子供を育てられない環境にあり、産んだ子供の幸せを切に望んで、苦渋の選択で養子縁組をしたんだよ」

ということを3,4歳の幼児でもわかることばで説明しています。

 養親である私は、養子である息子に出会えたことを本当に幸運であったと思っているということ、実母さんが息子であるあなたを産んでくれたことにとても感謝をしているし、これからも、ずっと家族として一緒に暮らしていこうね。ということをありのままに伝えています。

 養子の子供がその後の人生を自信をもって生きていけるよう、養親である私たち夫婦は“全力応援団”であることも、必要な条件かも知れません。

4.特別養子縁組をおすすめする3つの理由 

①望んでいても何らかの理由で子供ができない夫婦も子供を持つことが可能。

②子育てをするすばらしさを体験できる

③望まない妊娠から産まれた大切な命を救うことになる。

 特別養子縁組のためのいくつかのプロセスを踏み認められれば、法律上でも実子となります。

近年女性の社会進出と共に晩婚化と高齢出産、不妊治療を受ける人も増え続けていて女性にとっては「仕事との両立」で悩む人も多いのが実情です。

 夫婦共働きでも、迎えた子供の養子縁組を家庭裁判所に申し立て、審判確定前であっても育児休暇をとれる会社も多く、児童手当も対象となったり、普通に子を出産した場合と変わらない生活が送れます。

① 望んでいても何らかの理由で子供ができない夫婦も子供を持つことが可能。

 特別養子縁組は子供のための福祉のための制度であることを前提としていますが、子供を育てたくてもそもそも不妊などによって、なかなか子供に恵まれないなどで悩む夫婦の多くが特別養子縁組によって子供を迎え入れています。

 これまで養子縁組が出来る親の年齢を45歳~50歳など上限が設けられていたが、法改定などにより緩和され、25歳以上であれば(夫婦の一人が25歳以上であればもう一人は20歳以上であれば養親となることが出来る)特別養子縁組を組むことができます。(民間団体によっては年齢制限を設けているところも)

 養子縁組の多くは新生児から迎えられるので、この時期から成長を見守れるのは、養親、養子の双方にとって家族形成がしやすいです。

② 子育てをするすばらしさを体験できる

 血のつながりがなくとも、長い時間をかけて一緒に生活をしていく中で、愛情とかけがえのない絆が生まれ、養親、養子の双方に対して愛着形成がなされる。

 “人の親になる”という経験は、昔から「育児は育自」と言われるように、親にとっても学びが多く、人生の豊かさに通じる経験ができるのは、とてもすばらしいことです。

③ 望まない妊娠から産まれた大切な命を救うことになる。

 2022年出生数は過去最少となり、少子化問題は深刻化する中で、近年日本では毎日400件もの人工中絶がなされているとのこと。

また望まない妊娠をしてしまったことを家族などに言えず誰にも相談できず、出産後遺棄してしまうという事件が後を絶ちません。

 “望まぬ妊娠をする”ということの背景にはさまざまな社会問題が隠されていますが、特別養子縁組のシステムの認知が広がり、妊娠して困っている母親が児童相談所や民間団体などに相談することがもっと身近になればよいと願っています。

5.まとめ

 特別養子縁組は子供を望む親のためではなく、子供のための福祉の制度であることを前提に、

多くの人に、この制度を知ってもらいたいというおもいで、このブログを立ち上げました。

まだまだ日本では、特別養子縁組の制度の認知はあまりなく、なんとなく言葉だけ聞いたことがあるという方が多いのではないでしょうか。

改めてこの制度のほんの入り口にすぎませんが、

1.特別養子縁組とは    

 養子縁組には、特別養子縁組と普通養子縁組というのがある。

2.民間団体か児童相談所か?

 養子縁組するには大まかに、民間あっせん団体から迎える方法と

 児童相談所を通して子供を迎える方法がある。

3.特別養子縁組条件

 年齢や実子の有無、または養子の性別などは選べるのか。

4.特別養子縁組をすすめる理由

 子供のための福祉の制度ではあるものの、子供はあたたかな家庭で養育されることが望ましいという観点から、子供を欲しくても恵まれないというご夫婦には是非検討していただきたい制度。

家庭養育の重要性

 児童養護施設で18歳になるまで過ごすということを余儀なくされている子供たちの数が、日本は先進国の中でもワーストワン。

 家庭で養育される方が子供に愛着形成が育まれやすく、特定の人(親など)に長い間信頼関係を結ぶことで、子供の自立や自己肯定感を高くすると言われている。愛情や信頼で結ばれた信頼関係を持つことで、人間関係の基盤が作られ、後に社会へ旅立つ子供たちにとって情緒面や対人関係などに良い影響をもたらすといわれています。

 諸外国同様に、ひとりでも多くの子供が18歳まで施設で過ごすということがなくなり、あたたかな家庭という環境で成長することが出来るようになることが、もっとも重要なのです。

産まれてくる子供たちについて

 望まない妊娠をした母親が、それでも子供が幸せな人生を歩めるようにと願って、養子縁組という選択をして、児童相談所や民間あっせん団体への道を選んでいるのです。
自分のおなかの中で十月十日、しっかりと大事な命を育んでくれています。この出来事をきっと産んだ母親は生涯忘れることは無いでしょう。

せっかく誕生した新しい小さな命をきちんとつないでいかれるよう、さまざまな形であれ豊かな人生へと育まれることを切に望んでいます。

特別養子縁組を検討される全ての方に、素晴らしい“縁”がつながれますように。

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